発表当日
前夜、ろくでもないものを見つけてしまった私でしたが、翌朝は問題なく起きることができました。今まで何度も発表は経験してきましたが、いつまでたっても毎回ナーバスになって、発表前はほとんど食事が喉を通りません。
ただ今回はお粥が激ウマだったので、いつもよりは食が進みました。
日本人の観客数名、中国人の観客十数名、その他の研究者2名ほどに説明をして、発表を終えました。これからに残す課題がいくつも見つかりました。
まとめのまとめ
翌日、学会の全日程は終了しました。最終日のplenary lectureではアリゾナ大の某H教授が発表をされていました。わたしはこの人の発表を聴いて、何かとてもこみ上げるものがありました。
昆虫学の開祖のような人たちが居て、その方々の執筆した教科書を読んだ人が居て、またその人たちが教科書を書いて、それを私たちが読む、そんな脈々と続く研究の流れの中に身を置けることに幸せを感じました。
たぶんこの時私は涙目になっていたと思います。私は何も感じないときは、本当に何も感じませんが、感じるときはものすっごく感じます。
さておき、その後自分は Best poster presentation award を頂いた訳ですが、この時はもう感じまくった後だったので、報われた気持ちだとか喜びは相対的に小さくなってしまって、けろっとして、ひょうひょうとした立ち振る舞いをしてしまいました。
外国の研究者には、これだからジャパニーズはと思われてしまったでしょう。あの時はもっと「ヤホー」とか叫ぶべきだったと思います。
夜、去年まで同じ場所で研究をしていた中国人の先輩と話しました。彼は中国の研究の環境を嘆いていました。
それは私にとって、とても意外な事でした。なぜなら最近有名な雑誌の著者には中国の研究者が軒を連ねているし、研究費もたくさん付いているので困ることなどないのではと思っていたからです。
彼が嘆くことには、研究としてどう面白いかというよりか、どう役に立つかばかりに重きが置かれており、彼がしたいことは必ずしも恩恵を受けられる対象にないのだそうです。成長の過程にある国で基礎研究よりも応用研究が研究されるというのはよくある事でしょう。
「日本のようになるまであと何年かかるだろうか。」
と彼は問いました。
「わからない。」
と私は答えました。
ぺーぺーの私にそもそもそんな事分からないし、予想もつきません。
中国には大国のマンパワーと資金力があります。おそらくあとはそこに住む人たちに研究の思考が広く染み渡れば自ずと研究の大国になるんでしょう(もう既になりつつありますが)。
そして日本はどうなるだろうかと少し不安になりました。この時研究に対する哲学的な事とかいろいろ考えました。そして答えは上手く出せませんでした。
答えを出すというか、うまく自分の中でまとめる為には、もっと膨大な時間が必要だし、その考えを補強する為に、虫の本だけじゃなくて、哲学の本とかいろいろと糧を必要とすると思いました。
あと他にもいろいろ考えた事がありましたが、それぞれが断片的で、それらを一つの考えに紡ぐだけの精神力と時間的余裕がありません。だからまたそれは思い出したときに書こうと思います。
まとまりのないまとめ編 終わり(無理矢理)
以上で北京シリーズは終わりです。
北京編は 出発編から始まります。
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