私は,7年くらい前にNikonのD80を買ってずっとそれを使ってきたのだけど,
この度新しいカメラを買った。
D80は大変良いカメラで,私は普段これにパンケーキレンズを付けていた。
良い解像度で色合い良い写真が撮れるのだけど,
ちょっとした用途にはiphoneで事足りるし,
少し持ち歩きが面倒であるというのがネックであった。
だから以前からいいコンデジが あったら欲しいと思っていたのである。
また,最近は上手に写真を撮る人が増えていて,
アイデンティティが出せないというのも,
わざわざ一眼レフを持って出かける気をそぐものだった。
最近のカメラは大変性能が良くて,
シャッターを押せばそこそこの写真が撮れる。
別に私がとらなくても良い写真はごまんとあるのだ。
それでも,良い写真を撮りたいと思ったのは,
ひとえに件のプレゼン本を読んだからである。
良い,解像度の高い写真をスクリーン目一杯に出すのは,
シンプルな割に,非常にインパクトが大きい。
しかし,私はそういうのに手頃な写真を持ち合わせては居なかった。
これはプレゼンに使える!という写真に時折出会うことがこれまでもあったけれど,
そういった時は大抵カメラを持っていなかったし,
その時折のためにカメラを持ち歩くのは,
ミニマムな思想が染み付いてしまった私にはひどく骨のおれることなのだ。
陰翳礼賛
文豪 谷崎潤一郎は,日本,アジアの美と言うのは陰の部分に宿ると,
著書「陰翳礼賛」の中で説いた。
私も,日本で育った身であるから,
そういった感覚はよくわかる。
古い日本家屋の台所とか,
寺院の中とか,
外から屋内へ入ってみると,
たとえ昼間であっても,驚くほど暗いのである。
そういった暗い中において,
私たちの目は映し出すことが出来る,
黒ずんだ木の質感とか,
土間の重く寒い感じとかを,
私はこれまでカメラで映し出すことが出来なかった。
これは,良い質感だと思い写真を撮って,
後から見返すと,
あれ,これっぽっちだったかとがっかりするのである。
もちろんこれは,私の技量が届いていないということもあるけれども。
でもそういった,陰の部分さえも映すことの出来るカメラに出会った。
SigmaのDP2 merill
で,結局私が買ったのは,シグマのカメラである。
恥ずかしながら最近まで,シグマはサードパーティのレンズメーカーだと思っていて,
まさかこんなに良いデジカメを作っているとは知らなかった。
直前まで,つい最近発売された,DP2 quatoroと悩んでいたのだけれど,
あっちはまだ実勢価格が10万程度するし,
一眼レフと同じ位サイズがあるようで,
候補から外れた。
このカメラの優れたところは,
レンズの緻密さもさることながら,
光を受け取る素子にあるようで,
一般のベイヤー方式と呼ばれる素子とは全く作りが違うのだということである。
ただ,欠点もあって,高感度にめっぽう弱い。
また,私は虫の写真もある程度撮っていきたいのだけど,
これは単焦点の中盤レンズを積んでいる。
完全に虫をとれる装備ではない。
RICHOのコンデジであるCXシリーズはマクロに強く,
多くの虫屋はこぞって買ったということだが,
そこをあえてRICHOのGRシリーズを買いに行くような無謀さがある。
この辺りのことは一応考えている。
DP2 はとんでもない解像度を持っているので,
遠くからの写真であっても,後で等倍すれば実用に足る。
ただ,今よりも対象物によれるに越したことは無いので,
純正のクローズアップレンズや,独自のマクロシステムを考えていきたい。
冒頭の写真は,
カメラが届いてすぐに,窓から見える建物を撮ったのだけど,
後から見返すと,その解像度にびっくりする。
多分,これは結構よい買い物。